テレビドラマ「踊る大捜査線」の放送が始まったのは、1997年1月。

私は小学6年生だったはずなので、警察組織を一般企業の組織のように描いたこのドラマを、リアルタイムでしっかり視聴した覚えはありません。

ただ、中学生になった石森少年は、再放送や特別放送で「現場の刑事と、組織上とても偉い上司」の熱いドラマとして「踊る大捜査線」を見ていました。

学校で同級生とドラマや映画の話をしたことも覚えています。

そして2003年、「踊る大捜査線 THE MOVIE 2 レインボーブリッジを封鎖せよ!」が公開されます。

大学1年だった私は、さくら野百貨店(現在の石巻市役所)にあった映画館へ、自分史上初となる同じ映画を3回観に行きました。

結果として、長く実写邦画歴代興行収入1位となった作品に、微力ながら貢献したことになります。

当時の私は「組織」や「責任」なんて、まだよく分かっていませんでした。

でも、おもしろいことに。

自分が年齢を重ね、社会人として働き、組織の中でいろいろな経験をするにつれて、このドラマの「見え方」が変わっていきました。

「リーダーが優秀なら組織も悪くない」

学生時代に見た「踊る2」で、今でも強く覚えているシーンがあります。

捜査本部の指揮を執るよう命じられた室井さんが、青島に呼ばれ、小走りから走り出すシーン。

私はここで泣きました。今でも泣けます。

青島と室井の信頼関係が凝縮されたようなシーンです。

そして室井さんは会議室の後ろの扉から入ってきて、現場の捜査員の指揮を執ります。

この「会議室の後ろから入ってくる室井さん」が、本当に好きでした。

そして、そんな室井に対する青島の言葉があります。

「リーダーが優秀なら組織も悪くない」(青島俊作)

組織に属する人は、多かれ少なかれ、リーダーの判断や決断、組織運営によって動きます。

そんななかで、

「ウチのリーダーは優秀だ!」

と現場の人間が胸を張って言える職場は、きっと良い結果を生み出している。

歳を重ねた今だからこそ、この言葉の意味を考えるようになりました。

「責任を取る」とは何なのか

そして私の人生において、「責任」という言葉を教えてくれたのも室井さんでした。

「責任を取る。それが私の仕事だ」(室井慎次)

「責任を取る」と口にするのは簡単です。

では、本当に責任を取るとは何なのか。

私は最近になって、

責任を取る=事故が起こらない組織づくりをすること

なのではないかと考えるようになりました。

何かが起きたときに謝ることだけが、責任ではありません。

事故や問題が起きないように考え、判断し、仕組みをつくる。

その立場にあること自体が「責任を負う」ということなのだと思います。

もちろん室井さんは、劇中で責任を取って広島に飛ばされたりもするのですが……。

成果を出すことと、責任を負うこと。

その両方を背負う立場とはどういうものなのか。

私にそのイメージを教えてくれたのは、室井慎次でした。

「俺に部下はいない。いるのは仲間だけだ」

「踊る大捜査線 THE MOVIE3 ヤツらを解放せよ!」では、青島は湾岸署強行犯係の係長となり、部署を任される立場になっています。

そんな青島が、映画のクライマックスで言います。

「俺に部下はいない。いるのは仲間だけだ」(青島俊作)

現実の組織で、管理職がこんなことを言ったら現場が戸惑うかもしれません。

でも、「部下」ではなく「仲間」と思ってくれている上司との間には、また違った信頼関係が生まれるのかもしれません。

元サラリーマンでありながら、最後まで警察組織に染まりきらなかった青島らしさが詰まった言葉だと思います。

「組織で生きる人間こそ、信念が必要」

そして「踊る大捜査線 THE FINAL 新たなる希望」。

青島が自転車で走り、さらに自分の足で走り、バナナまで登場しながら真下署長の息子を救出して事件は解決。

シリーズが一度、大きな区切りを迎える映画のラストで、室井さんはこう語ります。

「組織で生きる人間こそ、信念が必要」(室井慎次)

「組織=人=生き物」と考えると、組織のあり方は、その時々で変わっていきます。

時代の流れに対応するために、人が入れ替わり、役割が変わり、新陳代謝を繰り返す。

その中で、自分は組織とどう向き合うのか。

一人ひとりが考えることになります。

だからこそ、自分の考えを持ち、それを貫こうとするなら「信念」が必要になる。

組織を率いる立場になった室井さんだからこそ、たどり着いた言葉なのかもしれません。

そして、30年後の「踊る大捜査線」

そして迎えた最新作「踊る大捜査線 N.E.W メトロポリスを駆け抜けろ」。

1997年のドラマから室井さんを描いた映画まで、これまでの登場人物たちを振り返りながら、長い間スクリーンから離れていた青島の「いま」が描かれます。

コートを着た青島という意味では、「THE FINAL」から14年。

この空白の時間があったからこそ、再始動した「踊る大捜査線」には懐かしさがあり、それと同時に新しい楽しみもありました。

ドラマでは新人刑事だった青島も、あれから約30年。

それでも、新たなバディとなった若手刑事と一緒に捜査をしています。

新陳代謝を繰り返す組織の中で、かつて湾岸署で仕事を共にした仲間たちは、それぞれの組織や部署へ散り散りになりました。

それでも青島は、室井さんとの約束や、自分が信じる正義を胸に、相変わらず走っています。

そんな青島を見ていると、

「この14年間も、きっと変わらず仕事をしてきたんだろうな」

と想像してしまいます。

それが、私にとっての今回の映画の楽しみ方でした。

個人的には、本当に最高の終わり方をしてくれた映画でした。

新人刑事だった青島も、いつの間にか和久さんの年齢に近づいています。

定年を前にした青島俊作は、これから何を思い、何を残そうとするのか。

そして、組織の中で青島が守り続けてきたものは、次の世代へどう受け継がれていくのか。

新しい「踊る大捜査線」の躍進に期待です!!