サッカーのことは、ほとんど分からなかった

私がコバルトーレ女川の運営に本格的に関わり始めたのは2018年。

チームがJFLへ昇格した年だった。

https://twitter.com/cobaltore/status/1028072547177267200

当時、私は石巻日日新聞に所属しながら、広報や事務局業務を担当することになった。正直に言えば、サッカーの知識はほとんどなかった。

それでも、ホームページを整備し、SNSで情報を発信し、試合を盛り上げる方法を仲間と手探りで考え続けた。

地域がチームを育ててくれた

JFLという全国リーグへの挑戦は、地域にとっても大きな出来事だった。

ホームゲームには多くの人が集まった。

ボランティアが県外サポーターをもてなし、子どもたちは選手を取材し、地域のお祭りには選手が参加した。

https://twitter.com/cobaltore/status/1002836734890012672

試合の日の石巻フットボール場には、単にサッカーを観戦するだけではない空間が生まれていた。

https://twitter.com/cobaltore/status/1046359295481143296

そこには、

地域の人が集まり、
子どもが憧れを持ち、
県外の人が地域を知り、
新しい出会いが生まれる。

そんな光景があった。

私自身も、

「スポーツクラブとは試合をするためだけの組織ではない」

ということを、この頃から少しずつ感じ始めていた。

降格して見えたもの

奈良クラブとの最終戦。先制しながらも逆転負けを喫し、コバルトーレ女川はJFLから1年で東北リーグへ降格した。シーズン終盤には、JFL昇格の原動力だった野口龍也、黒田涼太ら主力選手も相次いで負傷離脱していた。

※最終戦はコバルトーレ女川1−3奈良クラブで敗戦

正直、悔しかった。奈良の地でこの写真を撮りながら涙をした。

全国リーグで戦うという夢は、わずか1年で終わった。

そんな時だった。古巣であるヤフーの取材チームがチームを取材してくれた。

取材テーマは意外なものだった。

「昇格するチームがあるなら、降格するチームもある」

華やかな昇格ではなく、降格したクラブのその後を追う取材だった。

サッカー選手をやめた後も「まち」に残る――JFLから1年で降格 コバルトーレ女川のいま(ヤフーニュース)

https://news.yahoo.co.jp/feature/1251

“復興に比べたら、Jリーグは遠くない”女川のクラブが挑み続ける理由(LINEニュース)

https://news.line.me/detail/linenews/eeab3b4a61a8

それでも残ってくれた人たち

チームは降格したが、それでも、チームに残ってくれた選手たちがいた。

新たに加入してくれた選手たちもいた。

そして、サポーターも変わらずスタジアムへ足を運んでくれた。

2019年3月、新シーズンを迎える頃には、多くのチームファミリーが苦しい状況の中でも力強く応援し続けてくれていた。

あの時のサポーターの姿は、今でも忘れられない。

私にとって、「自慢できるサポーター」だった。

勝敗だけではない価値を探して

2019シーズン。

1年でのJFL復帰を目標に掲げながらも、結果は東北リーグ3位。JFL復帰は叶わなかった。

それでも、前年以上にスタジアムを楽しんでもらいたいと思った。

カテゴリーが下がったからこそ、情報発信やホームゲームの企画をさらに工夫しようと考えた。スターティングメンバー紹介など、新しい演出にも取り組み始めた。

「勝てば人が来る」

もちろん、それは間違いではない。

でも、それだけではない。

勝っても負けても、また来たいと思ってもらえるクラブを作りたい。

少しずつ、そんな思いを持ち始めた。

スタンドに誰もいなかった日

2020年。

ようやくチームが形になり始めた頃、新型コロナウイルスが世界を襲った。リーグ戦は大幅に縮小され、チームも約1か月半にわたって活動を停止した。

当たり前の日常が、当たり前ではないことを知った。

そして7月。

無観客での試合が行われた。

スタンドには、誰もいなかった。

それでも、クラブの活動を止めるわけにはいかなかった。

私たちはYouTubeでの試合配信を始めた。

スタジアムに来られない人たちへ。

家で過ごしている人たちへ。

サッカーを届けるためだった。

クラブは誰のものなのか

降格。

コロナ。

苦しい時間が続いた。

それでも歩みを止めなかったのは、クラブを支えてくれる人たちがいたからだ。

選手。

サポーター。

地域の人たち。

企業。

ボランティア。

彼らの存在があったから、私は次第にこう考えるようになった。

スポーツクラブは、サッカーをするだけの組織ではない。

地域の人たちが集い、つながり、新しい価値を生み出す「地域のプラットフォーム」になれる。